のんびりまったり思いのままに。
ウィルグレ小話です。うーん…R-15位かな?念の為お気を付け下さい。
大丈夫でお時間御座いましたら続きよりどうぞ。
読みにくかったりしたらごめんなさい。 『雨音響く夜の―』
窓を叩く雨音と紙をめくる微かな音だけが定期的に続いている。
一人きりでソファに腰掛け、ウィリアムは静かに本を読んでいた。
時計の針はもうすぐ日付をまたごうとしている。
そろそろ休もうかと立ちあがった瞬間、扉を叩く音がした。
こんな時間に訪ねてくる人物と言えば思い当たるのは一人だけだ。
ウィリアムは迷うことなく扉へと向かい相手を確認もせずに扉を開けた。
「こんな時間に何の用ですか、グレル・サトクリフ」
思っていた通り、一番初めに目に飛び込んできたのは見慣れた赤。
ただその色はいつもと違い、水を含んで重く沈んでいた。
確認もせずに開かれた扉に驚いたのか、赤い髪から除く黄緑色の瞳が数度瞬きをする。
「…傘も差さずに来たのですか?早く中に入りなさい」
扉を支え中へと招き入れる。素直に中へと入り、入り口で立ち止まったグレルは、
犬や猫がする様に頭を数回振って溜まっていた水分を振い落とした。
「グレル・サトクリフ、水滴が飛び散りますからやめなさい」
「アラ、ごめんなさい」
ようやく開いた口からこぼれたのは全く悪びれた様子の無い謝罪の言葉。
「直ぐにタオルを持ってきますから、そこを動かないでください」
眉間に見慣れた小さな皺を作り、ウィリアムは奥へと向かう。
額に貼りつく前髪をかき上げ小さく息をついてウィリアムを待ちながら
グレルは少し心配そうに自分の手元に視線を落とした。
「浴室に湯を張っていますからそのまま浴室に…」
タオルを渡そうとしたウィリアムの手がグレルの手元を見て止まる。
いつもはだらしなく腕までしか着ていない真っ赤なジャケットが
何かを包むようにグレルの腕の中に収まっていた。
ウィリアムの視線に気づいたのかピクリとグレルの肩が小さく跳ねる。
「あ、あのねウィル、実は…」
「にゃぁー…」
何かを言いかけたグレルの言葉に小さな鳴き声が重なる。
硬直してしまったグレルの代わりにジャケットをめくるとずぶ濡れの子猫が
愛くるしい瞳で見上げていた。
「とりあえずそのままでは風邪をひきます、早く浴室に行きなさい」
何かを言いたそうにしているグレルの頭にタオルを掛け浴室へと促す。
グレルもそれ以上は何も言おうとはせずに大人しく浴室へと向かった。
濡れ鼠状態の一人と一匹を浴室に押し込んだウィリアムは、タオルや着替えを
手際良く準備する。浴室からは時折グレルの奮闘する声と子猫の鳴き声が響いていた。
ソファに座り、再度読書をしていたウィリアムの元に子猫を抱えたままグレルがやってきた。
「もぉ、このコってば大人しくしてくれないから苦労しっちゃったワ」
口ではそういいながらもタオルに包まれた子猫を大事そうに抱え直す。
「子猫の世話を焼く前に貴方はまず、自分の事からしたらどうですか」
げんなりとしたウィリアムの視線の先ではグレルの長い髪から滴る雫が小さな水たまりを作っていた。その事には全く気付いていなかったらしく自分の足元を見てグレルはアラ、と目を見開いた。
「はぁ…まったく」
盛大な溜息をつくと同時に立ちあがり浴室へと向かう。
タオルを片手に戻るとグレルの濡れた髪を包み、
ソファに座る様に促した。そのままキッチンへと向かう。
「汚いコだと思ってたけど、こうやって見ると真っ白で綺麗なコなのね、アナタ」
キッチンから戻ると、グレルは自分の髪はそっちのけで楽しそうに子猫の体を拭いている。
注意するのも馬鹿らしくなってウィリアムは手にしていた小皿をグレルに手渡した。
「こんなものしかありませんが、なにも無いより良いでしょう」
「さすがウィル!よかったわネ、優しいお兄さんがご飯準備してくれたわヨ」
シャツの裾からすらりと伸びた太腿の上に小皿を載せ、子猫にミルクを与えるグレルの後ろに回りウィリアムは放置されている赤い髪を丁寧に乾かし始めた。
「それで、そうしてこんな時間にずぶ濡れで子猫なんて拾ってきたんです?」
「今日残業だったの。終わって帰ってたら雨が降ってきて…偶々このコを見つけたのヨ」
必死にミルクを舐める子猫の背中を撫でながら穏やかな顔でグレルが続ける。
「野良猫なんて山の様にいるし、いつもなら気にしないんだけど…」
小さく言葉を濁すグレルの様子が気になり赤い髪から目を離した瞬間にグレルの肩が小さく跳ねる。
「ヤダ!そんなに慌てなくても誰も取ったりしないわヨ」
グレルの肩越しに様子を伺うと、子猫が足を突っ込んでしまったのか小皿が引っくり返っている。残っていたのであろう少量のミルクが湯上りで火照った太腿の上を伝い落ち、それを子猫が必死に舐めている。
「ちょっとォ、くすぐったいって……もぉ、お腹いっぱいになったの?」
グレルは子猫を顔の前に抱え上げ視線を合わせる。にぃーと嬉しそうに尻尾を振る子猫の鼻先にグレルが小さくキスする様子をウィリアムは赤い髪を梳かしながら見下ろした。
「終わりましたよ」
髪を梳いていた櫛を机に置き、艶やかに流れる髪を整えながら声をかけると子猫に向けられていた黄緑色の瞳がようやく背後を仰いだ。
「ありがとぉ、ウィ…っんぅ」
言い終わらない内に仰け反った顎を大きな手で包み込み、感謝の言葉を紡ぐ唇をウィリアムは自らの唇で塞ぐ。
「んん!?ふぁ…っんー!」
突然の事に驚きグレルは目を見開いて足をバタつかせるが、ウィリアムが唇を離す気配はない。更に深く口づけ、舌を絡ませる。なす術のないグレルは背を反らせ出来るだけ楽な体勢を作るしかなかった。
「ぅん…ぁっ…」
気のすむまでグレルの口内を貪ったウィリアムが唇を離す頃には、グレルの体からはふにゃりと力が抜け瞳はじんわりと潤んでいた。
「ん、ウィ…ル、なぁ…に?」
ずるりとソファに沈むグレルを一瞥するも、ずれた眼鏡を元に戻すだけで言葉もかけず、ウィリアムは奥の部屋へと姿を消した。先程の余韻の抜けないグレルはまだ動くことも出来ず、視線だけをウィリアムの向かった方へ向けそのまま天井を仰ぐ。
ほどなくしてウィリアムが戻ってきた。その手には大きなカゴが抱えられている。
ソファに近づいたウィリアムはクッションをカゴの中に入れ、その上にブランケットを被せると、グレルの傍らで丸くなって眠っていた子猫を抱え上げた。
「貴方の寝床はここです」
寝室のベッドの横にカゴを置き子猫を降ろす。小さな頭を優しく撫でてやると安心したのか再び丸くなり目を閉じた。
「…さて」
子猫が眠りに就いた事を確認したウィリアムは、グレルの元へと足を向けた。
近づいてくる足音にグレルが視線を向ける。だらしなく投げ出された体とは対照的に、熱を帯びた視線は真っ直ぐにウィリアムを捉えていた。
「ウィル…」
ほんのりと赤く色づいた唇が名前を呼ぶ。ソファに片足をかけ唇を重ねるとグレルは先程とは違い、すがる様にウィリアムの首に腕を回し、キスをねだった。差し出される舌を吸い上げてやるとひくりとグレルの体が跳ねた。その体を軽々と抱え上げて寝室のベッドまで運び、ゆっくりとベッドに体を降ろしても首に回されたグレルの腕は離れようとせず尚もキスをせがむ。
「っぁ…はぁ、ん」
舌を絡め、髪を撫でながらグレルの気が済むまで口づけを続ける。ようやく気がすんだのか首に回されたグレルの腕から力が抜けた。音を立てて唇を離すと、足りない酸素を補うために薄く唇が開かれ規則的に胸が上下している。酸素不足でぼんやりとしているグレルを見降ろし、ウィリアムはシャツの裾から覗く太腿を撫で上げ、舌を這わせた。
「っ…!ウィルっ!?」
生温かい舌が太腿を舐め上げる感触に驚きグレルが上半身を起こす。
「どうかしましたか?私が舐めると何か不都合でも?」
「…ウィリアム、アナタもしかして焼きもち焼いて…アッ」
怪訝な顔をして問いかけるグレルの言葉を最後まで聞かずに、ウィリアムはグレルの太腿をちゅっと強く吸い上げた。
「そんな事はありません」
眉間に僅かに皺を寄せ、眼鏡を上げるウィリアムを見てグレルが盛大な溜息をつく。
「ハイハイ、ごめんなさい。気難しい猫ちゃんのお相手が先だったわネ」
どこかおどけた様に、大げさに言ってウィリアムの鼻先に軽くキスをしてやると、先程よりも深く刻まれる眉間の皺。
「グレル・サトクリフ」
不機嫌に咎める声を全く気にする様子も無く、フフフと楽しそうにグレルが笑う。
ギシリとベッドのスプリングを揺らしまるで猫の様な仕草でウィリアムの上に跨り肩に手をかける。
「アラ、猫ちゃんじゃないの?だったら…アタシの相手をして頂戴」
にゃぁーと猫の鳴き真似をして誘うように笑う。
「これは随分と手のかかる猫ですね…まったく」
困ったといった態度を取りながらもウィリアムはグレルを抱き寄せ、首筋から胸元へとキスを落としていった。
二人の声に目を覚まし顔を上げた子猫だったが、全く気にする様子も無く、数回尻尾を振ると小さく鳴いてまた夢の中へと戻っていった。
「…、ぃー…、みゃぁー…」
カーテン越しに入る光がうっすらと部屋を照らしている。
昨夜降り続いていた雨はどうやら上がったようだ。
聞き慣れない微かな鳴き声にウィリアムは薄く眼を開けた。
ぼんやりとした視界と頭のまま思考を巡らす。
「あぁ、貴方がいたのでしたね」
手を伸ばしベッドの傍らに置かれたカゴに触れる。
ふわりと暖かいものが指をかすめたかと思うと小さな舌が指先を舐め始めた。
お腹が空いたのだろうか、と身動ぎをした途端に腕の中に収まっていた温もりが小さく動く。
「…ここにも一匹いたんでしたね」
懸命にウィリアムの手を舐めていた子猫の頭を優しく撫で、口角を僅かに上げてウィリアムは子猫から手を離す。
「申し訳ありません、もう少しの間我慢して頂けますか。後でミルクを準備しますから」
ウィリアムの言葉に返事をするようににゃぁーと短く鳴いて子猫は再度ブランケットの上に丸くなる。
その様子を確認してからウィリアムは腕の中の温もりを抱き寄せた。
あともう少し――目覚めるまでには時間がある。
胸元に頭をすり寄せて眠るグレルの髪を撫でながら、ウィリアムは静かに目を閉じた。
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以前別のジャンルで描いたお話しを参考にしつつウィルグレ風にアレンジ(笑)
たぶん焼きもち焼くウィリアム様を書きたかっただけ。あと私ちゅーが好きです。
続き的なお話しも書いてみたのでよろしければ~↓あ、ウィルグレではないです。
グレルのが子猫を拾った理由みたいなもの。
→Text#02『悪魔と子猫と死神と』
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